ワールドワイド酒クズの海外酒場放浪記

ワールドワイド酒クズの海外酒場放浪記

日本人がバリに来なくなった理由が、今の日本を象徴していた。それでも私は海外へ行く

 チャイニーズニューイヤーにバリ島へ行きました。バリ島は6年ぶりくらいなのですが、時期のせいもあるかもしれませんがとにかく日本人に誰も会いませんでした。

 私が泊まっていたのはスミニャックで、少し落ち着いたお洒落なエリア。こちらに滞在しているのはオーストラリア人がメイン。アジア人は見かけない。たまに台湾人がいるくらい。

遊んでいたのはクタ・レギャンで、こちらも日本人がいない。クタってバリのメインエリアのはずなのに。10年前に来た時も、6年前に来た時も、日本人だらけだったのになあ。

 

不思議に思って現地のインドネシア人に聞いてみたところ、やはりここ数年で日本人が海に全く来なくなったとのこと。みんなウブドへ行ってしまうそう。

 

理由は簡単で、治安があまり良くない、という情報が出回ったからだそうです。(もちろん最近の若い子が海外に来ないとか、日焼けをしたがらないとかそういうのもあるそう)

 

「バリ クタ」で検索すると、「バリ クタ 治安」というワードが一番最初に出てくる。治安が悪いと聞いたのですが大丈夫ですか?という質問だらけ。

 

確かにクタやレギャンのあたりは雑多な街並みで、物売りもいるし、タクシーの運転手にはふっかけられるし声もかけられる。ローカルなお店のおじさんが提示してくるのは観光値価格。スリやひったくりもいるし、キノコとか葉っぱとか声をかけてくる人だって少なくない。

「日本人は少しでもネガティブな情報があると、それを鵜呑みにしてその場所へは行かなくなる。でも、クタが危険なら他の国だって危険だし、日本で危険な目にあう可能性だってあるでしょう。自分で気をつけて危険を避ければいいだけなのに。」

 

日本人が狙われやすい理由のひとつに、荷物が多いということがあるそうだ。

確かに他の国の人たちを見ていると、ほとんど手ぶら。万が一に備えてお財布は持ち歩かず、1日で使うであろう現金だけを手元に置くそうだ。そうすれば、バイクに乗った人に荷物をひったくられることもないし、万一スリにあっても被害は少ない。

 

スラム街を含め、海外約30か国を放浪した私からすると、バリの治安なんて全然悪いうちに入らない。ニューヨークやパリの方が怖いと思うくらい。もっと言うと、新宿歌舞伎町の夜の方が治安が悪くて怖い。

 

危険に巻き込まれるのは国のせいではなくて、自分の危機意識の問題だ。

 

行動に移す前にネットで調べて、ネガティブな情報だけを拾って、その国は良くないと決めつけ、経験するチャンスを失う。何かが起きるとすぐ周りの責任にしたがるところが、すごく日本ぽいなと思った。 

 

大学生の頃、ペルーへ行った。その時にマチュピチュを上から一望できるワイナピチュという山に登ったことがある。そこから見えた景色は人生で見た景色の中でも最高に素晴らしく、自分の想像を超えるものがこの世にあるのだなあ、と震えるくらいに感動した。

同時に驚いたのが、登山道にも山頂にも、柵がなかったこと。危険を促す立て看板すらない。好きなところまで行ける自由を与えられる代わりに、落ちたら自己責任。

私は個人で行ったので登れたけど、日本のツアーで来ると入山すらできないとのこと。ツアー会社が事故の責任を取れないからだそうだ。

あのとき「自由と責任」という言葉の意味をはっきり理解したし、いかに日本では自分が守られた存在であるかも痛切に感じた。

そして、守られている世界で見た景色は、想像の範囲内でしかないことも。

 

もちろん国の情勢が不安定で、自分の力が及ばないところで危険に巻き込まれてしまう場合だってあるし、すべての事故が自己責任で回避できるものだとも思わない。夜の渋谷を歩いていたら、酔っ払ったヤンキーに出会い頭にぶん殴られて鼻を折られることだってある。(本当にあった友人の話)

 

でも例えば、大きな荷物を道路側の腕で持って道を歩くとか、南国だからといって露出しすぎた服を着るとか、日本語で話しかけてきた人についていくとか、そういうことをやめるだけで回避できるリスクがあるし、その先には素晴らしい体験があると思うけどな。
ネットの海でネガな情報をピックアップして「その国が悪い」という結論に達し、経験すること自体を諦めてしまうなんて、何てもったいないんだろう。ネガな情報からは対処法を学んで、自分で責任が取れる範囲で行動すればいいだけなのに。

できない理由、やらない理由を他者の中に求める。打開する術を持とうとしない。アクションはしないけど、批判だけはする。

ぬるま湯の中にいるのは、きっと気持ちがいいのだろうな。私には我慢ができないけれど。

 

とにかくバリは最高に楽しかった。治安、全然悪くないよ。

 

ごはんがおいしい。屋台でさえ!ご飯とおかず数品で、100円くらい。

ローカルの食堂のおじさんはファンキーで、フレンドリー。

路地が素敵で、街歩きしているだけで楽しい。

女の子がテンション上がる服がたくさん。ブティックで買うと高いけど、ローカルのマーケットで買うと1着800円以下に値切って買える。

 

私はいつだって、責任を負う覚悟はできてる。その代わり、好きなように生きていたいんだ。まだ経験したことのない、想像を超えた心の震えを求めて。

 

またすぐ行きたいな、バリ。