セブ島の「スモーキー・マウンテン」、ゴミ山のスラム街
セブ島で最も危険なスラム街ロレガで、コミュニティ開発の中心的な存在であるデイビス牧師は、他の地域の支援も行っていた。
それがセブ島の「スモーキー・マウンテン」。ゴミが集積され山となった場所で住民は生活をしている。ゴミが自然発火したり、化学反応を起こすことで常に煙が立ち上っている様から、スモーキー・マウンテンの名がつけられた。セブ島には幾つかスモーキー・マウンテンがあるようで、私が行ったのはそのうちのマンダウエにあるダンプサイトだ。
ゴミの山の中で生きる住民たち
スラム街というと、日本のホームレスを連想するかもしれないがそれは少し違う。スラムの住民たちの家はスラム街であり、住居の周りにあるゴミから廃品を集めて売って生計を立てている人もいれば、スラム街から毎日職場へ行く人もいるのだ。それはレストランだったり、ジョリビーだったり、清掃だったり、もちろん人によって違う。
一概には言えないが、スラム街の中で大きな(と言っても簡素な造りだ。多くがベニヤ板とトタンで簡易にスペースを区切った住居に住んでいるとすると、コンクリートが使われている家、という程度)家に住んでいる家族は、ドラッグや拳銃などの収益を得ている可能性があるとのことだった。
ゴミの山の中に住んでいると言ってもあまりイメージが湧かないのではと思う。
こんな感じです。
これはサリサリという、フィリピンのコンビニのようなもの。どこにでもあるのだが、まさかダンプサイトで見るとは。
住民が生活していることがわかる。
廃墟はひとつもなく、すべてに人が住んでいる。大家族が複数、身を寄せ集めて住んでいる。
本当にゴミの中だし、煙もすごい。至る所が少しずつ燃えている。一面煙が立ち込めているエリアもある。単純に火が燃えているだけとは違う、有害なにおい。
道路の壁となっているのもゴミ。道路もゴミ。細かいプラスチックの破片やビニールなど、自然に還らないも物質が細くなって地面を形成している。
そんな中を、裸足で駆け回る子供たち。
歩いているだけで、子供たちが駆け寄ってくる。
最初は恥ずかしそうにしている子供たちも、一人を抱っこすると全員が一気に押し寄せてくる。
ここでもやっぱり、バスケットボールは人気だ。足場が危険だが、子供たちは元気に遊んでいる。
この街にも電気はある。もちろん、家によってはきちんと電気を引いているが、多くの家は不法に電気を奪って使っている。
スラム街は静まり返っているのではなく、スピーカーから大音量で流れるクラブミュージックや、カラオケに興じる人々の歌声、子供達の歓声に溢れている。そこはとてもハッピーでポジティブな空間であるような錯覚を覚える。
デイビス牧師はこの地で、住民が自立していく支援を行なおうとしている。そう、ロレガと同じように。
まずは子供達のための学校を作ること。見せてもらったその土地、今はゴミの山ではあったが、きっと数ヶ月後には子供達が安心して集えるスペースになるのであろう。
人懐っこくて、純真無垢な目をしている子供たち。性善説を唱えずにはいられなかった。生まれてきた子供には罪はなく、罪のない子供が理由もなく不幸になるようなことはやっぱり、絶対にあってはならないことなのだと思う。
ここでも他の国の支援団体を見かけた。青空教室を開いているようだった。
セブには支援の手がたくさん差し伸べられていることは容易に実感できた。だが、街全体の完全な自立までの道のりは果てしなく遠く、長いのかもしれない。
それでもきっと、変えようとするリーダーが現れ、影響されて自主的に動きだす住民が現れ、一人でもいいから夢を叶えることのできる住民が現れたなら、それは成功と呼べるのだと思う。
ゴミ山であることには間違いはないのだが、やはりトンドの貧困地域を見てしまうと、セブのスラム街はそこまでひどい状況ではないように思えた。
トンドが心配だった。
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