アジアNo.1パティシエJanice Wongの「食べるアート」で五感が驚く。
Janice Wong(ジャニス・ウォン)
シェフであり、アーティストという肩書きを持つシンガポール人パティシエ。
ピエール・エルメなど、世界の名だたるパティシエの元でスイーツを学んだのち、自分の名前を冠したお店をシンガポールにオープン。
2013年、2014年と2年連続で、英国「the prestigious San Pellegrino」主催「アジアベストレストラン50」のアジア最優秀ペストリーシェフ(パティシエ)に選出。世界的にも高い注目を集めている、「新しいデザート」を体験させてくれるパティシエである。
Edible Art(食べられるアート)としてのデザート。
今回訪れたのは、2016年8月にオープンしたJanice Wongの旗艦店となるレストラン。ナショナルミュージアムの奥に位置しており、南国の生命観あふれる緑の中にそびえ立つ白亜の建物は眩しく、美しい。
このレストランでは小籠包を始めとする中華のメニューも提供されている。「フォアグラポークチェリー」の小籠包や、独創的な「そうめん」などのラインナップは提供される料理をイメージすることが難しく、好奇心を刺激する。
だが、私が気になるのはやはり「edible art(食べられるアート)」と彼女が読んでいるデザート体験だ。
「アーティスト」と「シェフ」という二つの肩書きを融合させた彼女が、全く新しいデザート体験を五感で感じさせてくれるという。
デザートコースは全部で3種類。
デザート8品のコース($68)、5品のコース($79)、3品のコース($48)だ。
食べるアートにはとても興味があったのだが、実は私は甘いものが苦手。小籠包が食べたいところだが、3品のコースをオーダー。友人は8品コースをオーダーした。
五感が驚くデザートたち。
提供されたのは、想像をはるかに超えるデザート体験だった。
まず視覚が驚く。そこにあるのは見たことのないデザート、味の想像出来ないデザート。見たことのないデザインで盛り付けられた美しい「何か」。
しかし人はまず見た目から味を想像することができる。見ているうちになんとなく、過去の経験から味を想像している自分に気づいた。
一口サイズにとりわけようとして、触覚が驚く。
想像と異なる触感なのだ。柔らかそうに見えたものは固く、固そうに見えたものはぐにゃりとした弾力がある。これはなんだろう?
そして同時に、嗅覚が驚く。視覚から想像した香りと違うことに気づく。
口に含むことで味覚が驚く。
想像と違うどころではない。過去に食べたことのない味の組み合わせ。共存する濃厚さと爽やかさ。甘さと、時に辛さ。相反する味覚の混ざり合う不思議な境界。時折感じる、懐かしい味・・・そう、和の味が混ざるものさえあるのだ。
後味、鼻に抜ける香りの斬新さにまた驚く。
信じられないことだが、時には聴覚が驚くデザートを楽しむことができるのである。
それは完全に今まで経験したことのない、全く新しい「食べられるアート」であった。良い意味で常に五感が裏切られる。いかに私の固定概念の中で味覚が定義づけられていたか、純粋に驚きを感じた。
視覚から驚いてほしいので写真をアップしないことにしました。
上の写真はラクサのチョコです。ラクサってあのラクサ、シンガポールのラクサリーフ。ラクサチョコと聞いて驚き、食べてまた驚く。
レストランにはテイクアウトのスイーツも。ディスプレイは眺めているだけで楽しい。きらきら光る宝石のようにも、縁日で売られている子供のおもちゃ箱にも見える。
アートは自分の世界がいかに狭いものか、いかに自分の想像の範囲内で生きてしまっているのかを気づかせてくれるところが好きだ。
Janice Wongは確かにアーティストだった。
純粋にスイーツを食べに来たと仮定した場合。
おすすめは8種コース。少量のスイーツが8種類出てくるので楽しめるし、食べられる。
3種コースは1つ1つのボリュームが大きかったため、すべて美味しかったけど3皿目はほとんど残してしまった。(驚きレベルでいうと、びっくりのが出てくるのは3種コース。1皿のサイズが大きいから派手な演出ができるのだと思う)
体験としては非常に面白いが、甘くて美味しいものが食べたいだけであれば有名ホテルのスイーツブッフェがいいと思う。あくまでも「食べるアート」を体験しに行く場。リアクションとしては「おいしい〜!」ではなく「すごい!」といった感じ。
お酒のマリアージュメニューもあり、日本酒も豊富。次回は試してみたい。
JANICE WONG SINGAPORE
93 Stamford Road, #01-06, National Museum of Singapore, Singapore 178897
Tel: +65 97125338
Email: info@janicewong.com.sg
2016年2月号のFRAUのシンガポール特集で少しだけ紹介されている模様。
紹介されているお店はホランドの2am:dessertbar。
以上、意識高い系レストランレビューをお届けしました。現場からは以上です。